<夫婦心中>「ずっと一緒にいたかった」77歳と76歳
このお二人は悩みに悩みぬいた末の決断だったんだろうけど、なんだか悲しいです。こういう選択しかせざるを得なかった事が。
きっと、もっと他の選択肢や方法を試すことも出来たんだろうけど、そんな元気や気力もなくなって、追い詰められた気持ちになることって、誰にでもあると思う。同じようなことが起きない事を祈ります。
客観的に見たら、自分の子供に相談するなり、役所にかけあってみるなり、死ぬ事を選ばなくても、もっと他の方法が・・・ってあげれるかもしれない。けど、この人たちが弱かったんだ、って切り捨ててしまいたくない気がします。自分のことじゃなかったら、いくらでも冷静になれるし、客観的にみれるけど、自分の事となると他の選択肢を選ぶだけの元気や気持ちの強さを保てない時があるんじゃないかなと。
人間、いつでもそうそう強くはいられない。
自分がそう考えれるからといって、みんながそう考えれるとは限らない。
そんな弱さを気づける人でいたい。
>> 元記事
毎日新聞提供:
<夫婦心中>「ずっと一緒にいたかった」77歳と76歳
東京都大田区の都営団地で6月、死後1週間とみられるお年寄り夫婦の遺体が発見された。夫(77)は、入所していた特別養護老人ホームから一時帰宅中だった。自宅で暮らす妻(76)と夫婦離ればなれの生活を送っていた。室内には便せんに「ずっと一緒にいたかった」と書かれた夫婦連名の遺書が残されていた。警視庁蒲田署は、睡眠薬などを服用した心中とみている。介護保険制度が始まって5年。介護サービスが充実しているはずの大都会で、悲劇は起きた。
夫婦の遺体は6月28日午後3時ごろ、発見された。10日前から一時帰宅していた父親を大田区内のホームに送ろうと、区内に住む息子が都営団地1階の自宅を訪れた。ドアには内側からチェーンロックが掛かっていた。息子の通報で駆けつけた消防隊員がドアを開け、2人の遺体を発見した。夫は居間でうつぶせに倒れ、妻は寝室のベッドの上で死亡していた。外傷はなく、妻の体内からは睡眠薬が、夫からは殺虫剤が検出された。
夫は以前から足が不自由で車椅子生活だった。身の回りの世話をしていた妻もぜんそくなどの持病を抱え、年齢からも夫の介護が難しくなった。近所付き合いも少なく、2人で寄り添うように生きていた夫婦。夫は4月、ホームに入所する道を選んだ。妻は友人の女性(79)に「このままでは夫婦共倒れになってしまう。でも夫がホームに入ったので私1人になる。どうしよう。死にたい。ご飯を作る気もしない」と弱々しく漏らしていた。
夫の入所後、妻は数日間の短期入所などで夫に会い続けた。ホームの職員は「2人で一緒にいたいね」と話す姿を見たが、妻は介護が必要なほどではなく入所が認められる可能性は少なかった。
6月18日、夫が10日間の予定で一時帰宅した。20年以上暮らした団地で、久しぶりの水入らずの生活。2人は28日の別れを前に、ともに命を絶った。
近所の人によると、夫婦は週1回、ホームヘルパーの訪問を受けていたという。区は、2人で生活したいという夫婦の願いを把握していたのか。区介護事業課は「希望してもホームに入所できない人はたくさんいる。夫から申請が出されていたから基本的には入所する意思があったと思う。適正に入所事務が行われたと認識している」と回答した。2人の生活ぶりなどについては「個人情報にかかわることなので答えられない」と繰り返した。
息子は両親と国内旅行をするなど面倒をみてきたが、「何も答えられない」と話すだけだった。
夫婦が暮らした団地は築30年以上。2DKの間取りの各室には、1人暮らしや「老々介護」の世帯が目立つ。団地の自治会長(80)は「高齢者が多いから、『姿が見えなくなったら連絡を取り合おう』と会合で話し合っている」と語った。
警察庁の統計によると、03年の全国の自殺者(3万4427人)のうち、60歳以上は1万1529人(33.5%)を占る。98年に初めて1万人を突破した後は、ずっと1万人台で推移している。【斎藤良太】