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コンピュータ vs 人間
 ちょっと面白い記事を見つけたので、あくまでシステム屋の独断のみで弄くってみようと思う。あくまで私の独断と独自の解釈なので、筆者の言わんとすることからは逸れるかもしれない。システム屋システム屋と繰り返すからといって、「くどい!」って怒らないでね(笑)

 学生の頃、「システム」を作るということを知らず、インターネットを楽しめて、ホームページが作れて、ちょっとWindowsに詳しくて、自分でインストールから設定まで出来る程度の頃は、コンピュータに無限の可能性が潜んでいるような錯覚を持ったこともあった。だが、システム屋をやるようになると、人間の頭がどれほど優秀かを思い知らされる。
 人間の頭だと1分で終わる事が、コンピュータでは10分の時間をかけてプログラムを組み、指示を与えてやらねばならない。人間の頭なら突発的異変に対応できるのに、コンピュータはそこで全てが止まってしまう。人の手を借りて一つ一つ突発的事態への対応をプログラムで組み込まなければ、動かない。
 システムを作るようになると、痛感するのだ。結局は「人間の脳」がなければシステムは正常に動かない、「人間の脳」が行うのと同じようにはコンピュータは動かない、という事を。とはいえ、やはりコンピュータは優秀だ。人間の能力をはるかにしのぐことが出来るのも事実だ。



コンピュータに仕事を奪われない、つぶしが効く能力 BY 梅田望夫
HBS Working Knowledgeの「How Computers Are Changing Your Career(s)」を今日は読んでみよう。これは「The New Division of Labor」という本の著者、Frank Levy (MIT教授)とRichard J. Murnane(ハーバード教授)へのインタビューである。
コンピュータが人間の職をどう奪うのかというのは、昔からさんざん議論されている話だが、この本では、次の4つの問い
(1) What kinds of tasks do humans perform better than computers?
(2) What kinds of tasks do computers perform better than humans?
(3) In an increasingly computerized world, what well-paid work is left for people to do both now and in the future?
(4) How can people learn the skills to do this work?
を設定して議論を進めている。

相当な意訳ですが、あらかたの意味は間違っていないと思います。
(1) コンピュータと比べて、人間はどれほど多くの優れた仕事を行えるか?
(2) 人間と比べて、コンピュータはどれほど多くの優れた仕事を行えるか?
(3) ますますコンピュータ化された世界において、今後、人が良い収入を与えられる仕事には何が残っているか?
(4) それらの仕事をするための技能をどうやって学ぶことができるか?


二極化するキャリア
インタビューの冒頭で、
「Strange as it sounds, computerized work creates both high-skilled and low-skilled jobs. With a few exceptions, it is the "middling skilled jobs" that are most at risk.」

コンピュータ化が進んだ世界での仕事は、ハイスキルの仕事とロースキルの仕事に二極化し、中くらいのスキルの仕事が、いちばん消失リスクが高いと、著者たちは語る。そして、失われる「中くらいのスキル」の仕事を描写するために、著者たちは「"rules-based" repetitive work」という言葉を導入している。ルールに従って粛々と同じことを毎日繰り返すタイプの仕事である。このタイプの仕事は、コンピュータ化とオフショアリングの両方の攻撃を受ける。
ではルールで記述されにくい仕事とは何か。3つのタイプの仕事がある。
「1. Identifying and solving new problems (if the problem is new, there is no rules-based solution to program).2. Engaging in complex communication—verbal and non-verbal—with other people in jobs like leading, negotiating, teaching, and selling.
3. Many "simple" physical tasks that are central to janitorial work, waiting on tables, and other service work. (For example, entering an unfamiliar room and making sense of what you see is trivial for a human but extremely difficult to program.)」

第1が問題設定と問題解決。第2が複雑なコミュニケーション(口頭、非口頭ともに)を要する仕事。第3がシンプルでフィジカルな仕事。

 いわゆるコンピュータが人間よりも優秀でいられる部分というのが、『中くらいのスキル』の仕事であり、俗に言う「ルーチンワーク」であろう。確かに、ルーチンワークにおいては人間の仕事量とコンピュータの仕事量は格段に違うといえよう。
 二極に分類するとしたら、『ハイスキルの仕事』は『問題設定と問題解決』および『複雑なコミュニケーション(口頭、非口頭ともに)を要する仕事』、『ロースキルの仕事』を『シンプルでフィジカルな仕事』とであるとえるかもしれない。
 いわゆるシステム屋的に言うと、クライアントが必要とするシステムがどんなものなのかをヒアリングし、ベストなものを提案し、システムコンセプトを決め、プランニングを行い、クライアントに適したシステム設計を考え、リスクヘッジをし、テストケースや問題となりうるケースを想定し、プログラムを組み、コンピュータに仕事を与えることといえるかもしれない。
 『シンプルでフィジカルな仕事』とは、主として肉体労働のことといえるだろう。当然コンピュータでは肉体労働は出来ないよね。今のところ。肉体労働といえど、頭は使う。効率的に仕事を行うためにどうすべきか、問題が起きた時にどう無駄なく対応するか、それは「人間の脳」でなければ行えない範疇だろう。


もっともつぶしが効く能力
そしてこれからの時代で最も「つぶしが効く」能力は、
「Most secure are the people who know how to learn new material rapidly and how to communicate effectively with other people.」

新しいことを迅速に学ぶ能力と、他の人たちの効果的にコミュニケーションをはかる能力だという。そして子供たちの教育については、こうした時代に備えて、次の4つを考慮したほうがいいと説く。
第1が、読み書き能力と数学。これが問題解決とコミュニケーションの基本だからだ。
第2が、事実よりも物事の関係についての教育が重要だ。
第3が、選択式の試験はいけない。
第4が、コンピュータスキルの教育に時間をかけすぎてはいけない。
である。
当たり前の話だ、と思われる読者も多いだろうが、当たり前のことを当たり前に議論して社会を変えていくということのほうが、当たり前でないサプライズによって物事を動かしていくよりもかえって難しいことかもしれない。これからの競争の時代を生き抜くには、教育に尽きるというのが、競争社会アメリカの常識である。
「Technology and trade are still engines of economic growth but the engines now favor educated and skilled workers. Less educated workers are paying a big price so the nation as a whole can advance.」

 これはとても大事だと思う。システム屋にとっても非常に重要なスキルである。
 『事実よりも物事の関係について』の能力がなければ、ヒアリングも行えないし、クライアントが求めるシステムは作れない。要件定義やシステム設計を行う際にも、重要な役割を果たす。
 『読み書き能力と数学』も当然ながら重要である。システムに問題が起きたり、システムを設計する上で障害が出てきた場合、『問題解決とコミュニケーションの基本』が出来ていないと、的確かつ効率的な活動はできない。ましてやトラブルが稼動後の発生であれば、なおさらスピードと的確さが求められる。


企業による教育の具体例
さて、HGSE (ハーバード大学大学院教育学部) ニュースによる同じ著者たちへのインタビュー記事では、この本「The New Division of Labor」で挙げている「教育の具体例」についてこう紹介する。
「Using examples from IBM's Basic Blue Management Training, Cisco Networking Academies, and a Boston public school, Murnane and Levy show how U.S. firms and schools are learning to teach what they call expert thinking and complex communication, the two modes of thinking required to thrive in a computerized workplace.」

IBMとCiscoにおける教育を例にとって、米国企業が「expert thinking」と「complex communication」という2つの必須スキルを教える方法を模索しているかが書かれているらしい。ちなみに「expert thinking」と「complex communication」の定義は次の通り。「ルールで記述されにくい3つのタイプの仕事」の1番目と2番目に、それぞれ対応している。
「One is expert thinking the ability to solve new problems that cannot be solved by rules. (If the problem could be solved by rules, a computer could do it.)」

「The second general skill is complex communication, the ability not only to transmit information, but to convey a particular interpretation of information to others in jobs like teaching, selling, and negotiation.」

ここで挙げられているIBMのBasic Blue Management Trainingや、シスコのNetworking Academiesについては、このリンク以外にも、ウェブ上を検索するとたくさんの情報が得られると思う。

 『expert thinking』とは、ルールによて解決できな問題を考えて解決する能力である。逆説的な言い方をすれば、ルールで解決できる問題ならば、コンピュータが行えるということなのだ。
 『complex communication』とは、一口で言ってしまえば、コミュニケーション能力である。コミュニケーションといっても、日常生活におけるコミュニケーションだけではない。ヒアリングも含め、自分以外の誰かにその情報と解釈を的確に伝達する能力である。方法は口頭だったり、文書であったり、いろいろあるだろう。システム屋でいうところの、要件定義書やら外部設計書やら内部設計書やら。それらも含まれると思う。
 ポイントは、ただ単に事実となる情報を伝えることだけではないということである。その情報の正しい解釈を相手に正確に伝えて、理解させられるか、納得させられるか、衝突した場合に適正に解決し、ベストな方法を見出せるかどうか、ということだろう。

 教育の重要性は、今現在の会社でも痛感しているところである。
 私自身、まだベテランという域とは程遠いので教育を受ける側であることのほうが多い。技術的なスキルに重点おいた教育ではなく、プロセスや考え方に重点を置いた教育は、会社の質を左右すると思う。もちろん技術的なスキルの教育も重要なのだが、業務においては技術的なスキルというのは、実践しながら学べる部分が多いと思う。逆に実践し体験しなければ学べないものも多いのである。しかし、学習スキルというものを持っていなければ、どれだけ体験しても身はならない。そういう意味で、プロセスや考え方における教育、問題解決能力の教育が必要なんだと思う。


大企業の教育力も日米で差が大きい
本連載の「連載1周年:日本にとって米国のIT産業は絶対ではなくなった?」では、「日米の差が圧倒的な10領域」というのを選んで提示した。そしてその第8項目で
「(8) 大学、大学院、そして国家予算(軍事予算も含めて)での研究開発に関わること。ここもアメリカの生命線である。MITのオープンコースウェアについては、たびたび取り上げてきた(去年の9月8日、9月9日、今年に入って2月13日)し、大学経営における合理性の追求や競争のあり方(9月16日「大学の経営は進歩しているか」参照)、門戸を世界に広げた大学院の思想、国家研究予算をできるだけ有効に使うための仕組みや経験、その成果を産業界に移転していくことに関する法律の整備や仕組み。こういった部分のアメリカは、やはり優れている。2002年5月に産経新聞「正論」欄に、「若い頭脳活用する環境つくれ」という文章を書き、その冒頭を
「トップクラスの若い頭脳が徹底的に競争する環境がアメリカにはある。大学受験で競争が終わるのではなく、研究やビジネスの第一線から離脱するまで、永久競争とも称すべき競争が繰り広げられる。そのプロセスは厳しいが、トップクラスの若者たちを強くたくましく育てる。」

こう始めたが、まさにこういう領域のことである。」

と書いたが、この項目(8)の中に、大企業における「最新知識についての教育・トレーニングの体系化とその組織的実践」というのを追加しておきたいと思う。

 私の所属している会社は、大企業とは程遠いので、教育のために割ける時間や予算というのも限度があるのはわかるんだが、そこに人員と予算を割くことは決して損にはならないと思うんだがなぁ。と社長に直談判(というほどもおおげさなものではないけれど)したことはあるんだが、本当に分かってるんだかどうだか。


 これからの未来、仕事に困らないために求められるスキルというのは、技術的な側面性が薄れいているのかな、と感じた。技術が必要ないというわけではない。技術はあって当然のものなのである。それに加えて求められるスキルがあってはじめて、仕事で「使える人間」と評されるのかもしれない。

 教育を疎かにする会社の先は見えている。
 教育の重要性を認識しない人間は、成長がいつか止まる。
 個人的な持論である。
by harvestrain | 2004-07-21 20:56 |    →ちょっとトラバる
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