(フィクションです)
わたしは恋が終わると、必ず夜の海に行く。
夜の海は、わたしだけの秘密の場所。
わたしのだけの癒しの場所。
夜の誰もいない海へ行って、波の音をじっと何時間でも聞いてるのが好き。
引き波が、嫌なことも辛いことも悲しいことも、みんな持って行ってくれるような気がしてなんだかホッとする。
落ち込んだわたしに、海の波が「頑張れ!」って囁いてくれてるような気がして、好き。
通り過ぎる船の汽笛が、わたしに「負けるな!」って叫んでくれてるような気がして、好き。
人は、夜中に女の子が一人でそんなところへ行ったら危ないよ、
そういうけれど、一人だから考えに耽る事ができるの。
夜の海に行って、つらかった恋を洗い流す。
夜の海に行って、恋の予感に胸をときめかせる。
誰だって、恋をしたら傷つく。
恋の予感を感じても、
恋が始まっても、
恋が終わっても、
傷つく。
恋をするとね、人の心って敏感になるんだ。
あの人の声、
あの人の眼差し、
あの人の仕草、
あの人の手の大きさ、
あの人の笑顔。
あの人の全部に反応してしまう。
隣にあの人がいると思うと、なんだかドキドキしてしまう。
ぎゅっとね、抱きしめられてみたいって思う。
頭をね、よしよしってなでられてみたいって思う。
恋にときめくなんて、バカみたい。
恋する人とのデートを想像してるなんて、バカみたい。
そう自嘲しながらも、ときめく思いを抑えられない。
いつも、恋が終わる度に、
もう、二度と恋なんてしない。
もう、二度と人を愛さない。
一人で強く生きていくんだ。
夜の海を見ながらそう呟くのに、
気が付いたら、夜の海を見ながらあの人の事を夢想してる。
海は、わたしの恋の終焉の場所。
海は、わたしの恋の始まりの場所。
だから、海が好き。
( 続く )