エキサイト社長、山村氏のブログより「
One to One marketing 「ちょっとやりすぎ!?」 9月7日」にトラバです。
システム開発者の視点でサービスを語ってみようと思う。偉そうなのは気にしないでください。(笑)
システム開発者といえど、Webのシステムを作っている以上、「サービス」について考えないで済まそうとするのは、個人的には如何なものか思う。もちろん、仕事のスタンスやポジションで違うのだろうが。しかし、たかがプログラマといえど、自分が作ったプログラムを含むシステムを使うのはコンピュータではない。人間だ。人間が使う以上、コンピュータの向こうにいる人格を思わずにはいられない。
何でもかんでもシステム化してしまうこの時代に、「心」を忘れたシステムは、やはり良くないんじゃないかと思う。利益を度外視しろと言っているわけではない。営利団体である以上、利益があってこそのサービスなのは当然だ。しかし、顧客が、エンドユーザが、心地よくサービスを受けれる形が何なのか、そのためには何が必要なのか、これは追求し続ける必要があるんじゃないだろうか。技術の追求だけではやっていけない世の中になってきていると思う。
3つの取引形態
まず、一般的に言われる電子取引の種類として、以下の分類がある。
1.
企業 対
企業 >>
BtoB( Business to Business )メーカーと卸卸と小売業務アプリケーションをASP( Application Service Provider )として提供する。
2.
企業 対
消費者 >>
BtoC( Busines to Consumer )オンライン販売サイト(ECサイトなど)ゲームやコンテンツなどのオンライン提供サービス
3.
消費者 対
消費者 >>
CtoC( Consumer to Consumer )インターネット・オークション
CRMという手法
顧客のニーズに合わせたサービスの提供を実現するための経営手法として、
CRM( Customer Relationship Management )というものがある。どんなサービスを、どんな商品を、どういうタイミングで提供するのが最適か、集めた情報を体系的にまとめ、顧客をセグメント化し、適切なところに適切なサービスを提供するための手法である。
まず、顧客の情報を収集をする必要がある。次に、収集された情報を体系的にまとめ、顧客が求めるものが何かを知り、優良顧客を洗い出し、優良顧客には更なるメリットの高いサービスを提供し、そうでない顧客には、優良顧客に導くために適切なサービスが何かを知る。そうすることで、企業は、適切なタイミングで適切なサービスや商品を顧客に提供できるわけだ。
仕事柄、このCRMを実現するためのシステムを作ることもあるので、こういった概念を持っておかないと、商品(私の場合はシステム)を企画したり、目的に合った仕様やシステムの設計が出来ない。
顧客ひとりひとりのニーズを探る
特にBtoCの取引形態において、押し付けがましいサービス、過剰なサービスというのは客離れを招く。何事も程々がよいとはいえ、どこまでが適当で、どこからが行きすぎか、それを判断するのは大変難しいように思う。特に、ターゲットが広ければ広いほど、それは困難な作業になる。それは人間にしか出来ないことだ、というのも重要なポイントである。
以前にも記事にした事があるが、
ユビキタス社会を作ろうという風潮も、顧客それぞれのニーズに対応できるモノづくりという発想が根底にあるように思う。
この「顧客ひとりひとりのニーズ」に合ったサービスを提供するという考え方は、決して新しい発想ではないと思うのだ。山村氏は昔の有名ホテルのサービスを例に挙げておられるが、身近なところでも、行きつけの居酒屋のおやっさんやおかあさん、よくいく食堂のおばちゃん。そんな人たちに「今日はあんたの好きな○○があるよ」とか「そろそろ来る頃だと思って○○入れといたんだよ」とか、「あんた、これ好きやろ、とっといたんやで」なんて言われたことはないだろうか?それは、CRMという手法で表現されようとしている事柄と根本的な概念は同じだ。彼らはそれを自分の頭で行っている。当然、ターゲットも狭いからそれで間に合う。それでまかなえない規模の大きいサービスにおいて、システムが果たす役割が大きくなる。
最適なサービスとシステム化
何でもかんでも「IT化」だの「システム化」だのともてはやされた一頃は、客がシステムの仕様に慣れて合わせることが当然の如く要求された。しかし、もはや消費者はそれでは満足しない。顧客も質の高いサービスを知るようになった。今や、極め細やかなサービスが要求されるのである。
どれだけシステム化したとしても、「心」の抜けたサービスは、顧客にとって最適とは言い難い。CRMという手法で、情報を集めて統計された顧客の動向データも、使う側の考え方と発想力次第なのだ。たとえCRMのための素晴らしいシステムを開発できたとしても、使う側のサービスにこめる「心」がなければ、それはただのクズだ。
山村氏は「ITは武器である。しかし武器は間違うと凶器になってしまう。」と述べている。まさしくその通りだと思う。人を魅了する武器の使い手になるか、人を遠ざけてしまう武器の使い手になるか、それはシステムの問題だけではない。提供者の手腕が問われるところだと思う。
それは同時に同じ事がシステム開発者にも言えることだと思う。対クライアント、対エンドユーザが見えていないシステムは、「最適」とは程遠い。そして忘れてはならないのが、システムには限界があると言うことだ。開発的見地から見て、どれだけ素晴らしい秀逸なシステムであったとしても、ユーザにとって最適でなければ、その価値は半減する。システムでは判断しきれない事が多くある。
下手すると、一部の開発者は技術や技巧に凝ったシステムを作ることに必死になり、技術的な素晴らしさだけに目が行きがちだが、優れた技術が本当の意味で生きるのは、顧客にとって何が最適かを見据えた上で創られたシステムなのではないだろうか。
あるべきサービスの形とは
コストや開発工期に追われがちな現場の身としては、「そこまで考えてられない」という気持ちが沸く時があるのも否定はしない。人の数だけ「最適」があるのだから、追求したらキリがないというのも分かる。
けれど、システムのために顧客があるのではない。サービスのために顧客があるのではない。顧客のためにサービスがあり、システムがあるのだ。その順序をはきちがえてしまうと、この先、立ち行かなくなるんじゃないだろうか。技術力だけに頼ったシステム設計、予算にしばられたシステム設計、スケジュールに縛られたシステム設計、システムありきのサービス、それを続けていては、成り立たないように思う。開発者として、設計に携わることのある者として、クライアント、そしてクライアントの向こうにいるエンドユーザを見失わないシステム開発をしていきたいものだ。
「心」が抜け落ちたサービスやシステムは、いずれ廃れる。
私はそう思う。