Tech総研:
そのひと言が命取り☆自信過剰エンジニアが陥る罠
記事の前半の二つの例もさることながら、最後の畑村洋太郎氏の記事の部分に、とても共感する。氏はその記事の後半部分で興味深い言葉を書いておられる。
有能なエンジニアが技術力を重視し、コミュニケーション力を軽視するという罠だ。
元々私は文系の人間だ。この仕事に付く前の仕事は、みな接客業または直にお客様とやり取りの発生する仕事だった。当然ながら、自らのコミュニケーション能力が物をいう。
この業界に入ってよく耳にする言葉がある。
自分は、コミュニケーションとか文章作成が苦手だからなぁ。
私から言わせれば、「だから何?それで?」となるのだが、言い訳のように使われるこのフレーズ。なにやら腹立たしい。コミュニケーション能力の必要のない仕事をしたいのなら、何かの職人で一人黙々と工房にこもっていればいい。それでも誰かと一緒に仕事をするのなら、最低限のコミュニケーションは発生する。
システム屋だから、プログラマだから、コミュニケーションは苦手だというのは論外のいいわけである。言い訳にすらならない。人それぞれ得意不得意はある。それは仕方ない。が、それを免罪符のように使われては、極端な私は「ほな、就職するな」と思ってしまうのである。
コミュニケーションは、自分の考えていることや伝えるべき事柄話すだけではない。相手が受け入れやすい言葉の選択、相手が理解しやすい言葉の選択、誤解のない言葉の選び方、話題の提示の順序、そういった事を加味した上で筋道立てて論理的に伝えることが必要である。
そして、見落とされがちなコミュニケーションのもうひとつの側面がある。
相手の考えていること、相手の求めていること、相手が必要としていること、そういった相手の考えや状況、言葉には表されない裏にある事柄を汲み取る技術である。これは自分の考え正しく伝えること以上に難しいことかもしれない。しかし、仕事においてこの部分は必要不可欠だと思う。相手がどういうタイプの人間か、どういう言葉に心地よさをかんじる人間か、どういう提示の仕方だと受け入れやすいか。それを探りつかむ事が必要なのである。
販売業をしていた頃、買いたい物や目的が明確なお客様はそれを引き出すだけでよかった。しかし、特にこれといった具体的な要望がないけれど、こんなものが欲しいと思って買いに来たお客様は、店員の話の持って行き方ひとつで財布の紐が緩む。相手に明確な目的を与えてあげるのだ。それもひとつのコミュニケーションだと思う。
伝えたい事を適切な言葉で適切なタイミングを見計らい、適切な方法で提供する技術も重要である。
しかしそれ以上に、相手の求めているものを的確に把握するということは、コミュニケーションの基本であると思う。